1940s!-いくよおれたち!- 【軍パロ R-15】断罪 忍者ブログ
うたの王子さまたちでいろいろ。はじめにまたはプロフを御一読ください。
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神宮寺と嶺二先輩のお話です。
軍パロという特殊な設定になっておりますので、閲覧の際はご注意ください。
また、暴力描写や殺人描写を含みます。よって、R-15とさせていただきます。
苦手な方への閲覧はおすすめしておりません。


完全なる自己満足ですが、お付き合いいただけるという方だけ追記からご覧ください。


じめじめとした地下牢に神宮寺はいた。複数の男がその周囲を取り囲んでいる。腕を拘束されたまま、神宮寺は椅子に座っている。しくじったな、とどこか他人事のように考えた。


敵軍本部から情報を盗むよう命じられたのは、3ヶ月程前のことだった。
どうやら、大量殺戮兵器が開発されたらしい。まだ実用段階には至っていないものの、用いられた場合、兵力の損害は甚大なものになるであろう。その兵器に関する情報を得て、損失を未然に防ぐという任務を課せられていた。

任命されたのは神宮寺の他に、もう1人。寿嶺二という男であった。これまで何度か共に任務をこなしている。恐ろしく鋭い男だ。しかし、普段そんな素振りを見せることはなく、寧ろ己を愚鈍に見せる。能ある鷹は爪を隠す、なんて言葉は、まさに彼のために存在しているような、そんな男だ。
寿との任務において、目立った失敗は特になかった。ただ実践を数多くこなしているだけではなく、寿自身が、より確実に、安全な策を練ることに長けていたからだ。彼の情報量は、陸軍諜報部隊の中でも、際立っていた。軍関係者にも殆ど知られていないような情報を、なに食わぬ顔で握っている。だがそれをむやみに晒すような真似はしなかった。
それが、神宮寺には少々気味悪く映った。人を見る目には長けていると自負していたが、寿が腹に何を据えているのかは図りかねる。しかし、これといった妨害や、駆引きを持ちかけてくるなんてことはなく、面倒見の良い、利用価値のある先輩だと思っていた。

そんな彼との任務において、神宮寺は重大なミスを犯してしまったようだ。何らかの原因で、自分がスパイであるとバレてしまったのである。情報を集める際には細心の注意を払ったつもりであったが、どうやらそうでもなかったらしい。
寿に救援を求めるにも、今回の任務において、接触することは禁じられていたため、不可能である。既に敵軍には、新兵器に関する情報を嗅ぎ回っていたことが露呈している。神宮寺を取り囲む目は、裏切者、そして彼らの敵への憎悪を露にしている。
神宮寺は諦めたように溜め息をこぼした。

「……で、何か言えばいいのかな?」
「貴様、ふざけているのか」
「ふざけてなんかないよ。オレが持ってるあっちの情報を、あんたらにあげればいいんだろ?」

神宮寺は面倒臭そうに言った。
黙っていたところで、どうせ吐かされるに決まっている。ならば、適当に嘘の情報を教えて、解放された方がいいのは明白だ。それに、軍への忠義の為に死ぬのはごめんだった。他に、もっとやらねばならぬことがある。
敵兵はそんな神宮寺の姿を見て、拍子抜けしたようだった。

「……貴様には忠誠心はないのか」

呆気にとられた表情で神宮寺を見る。彼らにとって軍へ忠誠を誓うことは至極当然であり、それをあっさり放棄することは神に背くに等しかった。つくづく、教育と言う名の洗脳とは恐ろしいな、と神宮寺は思った。

「忠誠心なんてどうでもいいからさ、聞きたいの?聞きたくないの?」

ニヤリと笑いながら神宮寺は尋ねる。面倒なことはさっさと終わらせてしまいたい。

「貴様ァッ!!」

その態度が頭にきたのか、敵兵の1人が神宮寺に殴りかかる。重たい拳が側頭部を強打した。その衝撃に、目の前が一瞬暗くなる。

「……っ!」
「捕虜の分際で!調子に乗りやがって!」

がんがんと響くような痛みに顔をしかめていると、殴りかかってきた兵士は襟首を掴み、殴られた方の反対側の頬を殴った。

「スパイ風情が!どうせこそこそと嗅ぎ回るような真似しか出来んくせに!」

余程頭にきたのか、容赦なく罵声を浴びせる。そのせいで、余計に痛みが増幅されるような気がした。さっき殴られたせいか、口内が切れて鉄の味が広まる。それでも神宮寺は動じなかった。

陰で暗躍することの多い諜報部隊は、どういうわけか最前線に立つ兵士と違って、卑怯ものというレッテルが貼られることが多かった。どちらも危険な任務に携わることに変わりはないのに、何故か一般的な戦闘兵からは、一方的に見下されることが多かった。このような暴力などは、所詮頭が使い物にならない馬鹿の逆恨みでしかないと、割り切らねばやっていけない。それと痛みはまた別物であるが。

「まぁまぁ、いいじゃないか」

穏やかな声が、先程の兵士をたしなめる。声の主を見ると、目深に帽子を被っており、表情を読むのは難しい。

「せっかく情報をこちらに渡してくれると言うんだ。素直に好意に甘えようじゃないか」
「しかし…」
「所詮はスパイ行為を行う低俗な輩だろう?彼に忠誠心なんて高尚なものを求めること自体無駄じゃないか?」

兵士が黙ると、その男は神宮寺に向き直り、穏やかに告げた。

「で、情報と言うのは何だ?我々にとって有益なものか?」
「……近々、大きな軍事作戦が行われる。その日時と内容ってのが、あんたらにとって有益かどうかは知らないが、オレが教えられるので一番まともなのはそのくらいだね」
「ほぉ……中々じゃないか。よろしい、聞こう」

簡単に引っ掛かったな、と内心馬鹿にしながら、神宮寺は口を開いた。


◆◇◆


「……なるほどな」
「どう?これで満足?」

神宮寺は口元に薄い笑みを浮かべた。微妙に改竄した事実を、辻褄の合うように告げる。元々口が達者だったのもあるが、士官学校での訓練によって、こんなことは朝飯前だった。

「実に有益な情報だ。君には感謝しなければなるまい」
「だったら早く縄をほどいてくれよ。流石にこの体勢でいるのも疲れちゃったな」
「まぁそう慌てなくとも、解放してやろう。ただ、少し気になる点があってね」

男は薄気味悪い笑みを浮かべた。

「私が聞いた話だと、君が教えてくれた日の1日前に、襲撃があるはずなんだが」

神宮寺の瞳が揺らぐ。この情報はまだ味方にすら広まっていないはずだ。此度の任務と関連して行われる予定だったので、神宮寺と寿にのみ、知らされているはずだった。他に知っていると言えば、軍の上層部の中でもごく1部の人間だろう。それを知っていると、確かにこいつは言っていた。動揺から、思わず息を飲む。

「その様子じゃ、図星みたいだけれども。じゃあ君が南方から進軍するって言ったのも嘘か?本当は、北からの進軍かもな。目的も、第3師団の殲滅、ではなく、新兵器を開発してる科学班への襲撃か?」
「……さぁね。ともかく、教えたことに変わりないだろ。早く解放してくれないかな?」

神宮寺はなんとか平静を装いながら言った。手からは汗が滲んでいる。男の情報は、全くもって正しかった。それが確実性を帯びる前に、その場を離れなければ命の保証はない。この状況では、錯乱させられれば上出来だろう。このことを上層部に伝えて、軍事作戦の決行を早めることが出来れば……。

そんなことを考えていると、鳩尾に強烈な一撃を喰らった。思わず咳き込むと、髪を力一杯鷲掴みにされ、顔を無理矢理上げさせられた。そこには、先程散々罵倒を浴びせてきた兵士の他に、2,3人の兵士が、威圧的な表情で神宮寺を見下している。

「そう簡単に、解放なんて出来るわけがないだろう。本当のことを言ってもらわないと、何より確認が出来ない」

男の口の端が意地悪く歪む。完全にミスを取り戻すことが出来ないことを悟り、諦めたように神宮寺は笑い、目を閉じた。
 

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